めぐり逢えたのに
「佐々倉さん。あのね、今、コンビニのバイトが決まったの!」

弾んだ声が聞こえてきて、佐々倉は安心した。

「そう、いい話で良かった……、何だろうと心配したよ。」

「あっ、ごめんなさい。そんなこと全然考えなかった!あたし、嬉しくて。これで少しは佐々倉さんのために何かできるかな、って。お仕事の邪魔をするつもりなんて全然なかったの。じゃあ、電話切るね。」

すぐにでもプチッと切ってしまいそうな勢いに佐々倉の方が慌てる。

「ちょっと待って! もうすぐお昼だから一緒に食べない?出て来れる?」
「……ごめん。早速今日の午後からバイトなの……。」

ひどく落胆するのが自分でもわかる。

「そうか、じゃあ頑張ってね。応援してるよ。」

まるで、足長おじさんか何かのようだ。自分のセリフに自分でも苦笑した。


その日のしおりは、まるでしゃべる機関銃だった。
「あたしね、昔っから計算だけは得意だったの。でも、今日はすごく緊張してたから、1000円もらって、おつりを5450円も出しそうになっちゃった。本当は545円なのにね、お客さんの方が慌てちゃって……、二人で笑って、帰ってくれたから良かったけど、気をつけなくっちゃね。」

しおりは止まらなかった。しおりの口からは次から次へと言葉が飛び出した。

瞳が輝いている。ほんのりと紅く染まった頬はしおりの喜びを体現していた。形の良い唇は一時も休む事がなく動き続ける。
何より、くるくるかわる表情がチャーミングだった。



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