めぐり逢えたのに

「あたし、一生懸命働いて、早くお金を貯めて、出て行けるように頑張るね！」

にこにこと笑うしおりに、良いよ、出て行かなくて、と喉まででかかって慌てて引っ込めた。

代わりに出て来たのは、えらく物わかりのいいおじさんの言葉だった。

「でも、無理はしないようにね。体壊したり、またネカフェに泊まるようじゃ意味ないから。」

次の日から、佐々倉よりも早く出かけて行って、時に佐々倉よりも遅く帰って来ることもあった。
店長がいい人で、しおりの事情を知っていろいろ良くしてくれるらしい。顔を輝かせて話すしおりを見ていると、見た事もない店長に嫉妬を感じるのがわかる。