めぐり逢えたのに
もう、ワインを飲みながら、私は夫の前だというのに、彼にべったりだった。

私は誰かの前でいちゃいちゃと彼に甘えてみたかった。程よく入ったアルコールが私を大胆にさせる。
私は彼の腕に自分の腕をからめ、彼の頬に顔をくっつけんばかりにしなだれかかった。

ホント言うと、私は今すぐにでも彼とベッドに行きたかった。

「万里花は小野寺さんにべた惚れですね。」

佐々倉が苦笑すると、彼は妖しげに微笑んだ。

「違いますよ。僕がべた惚れなんですよ。」

私はくすくす笑った。

「本当に?じゃ、もっと態度で表して欲しいな〜。」

私も、よくもまあ、佐々倉の前でぬけぬけと言えたものだと思うが、彼も負けてはいなかった。

「本当だよ。万里花さん。」

彼は後ろから手を回してわたしを抱きしめようとする。
佐々倉はだんだんと辟易してきたようで、程なくして自分のところに戻って行った。



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