めぐり逢えたのに
外におおっぴらに遊びにいくことは無理でも、旅行ぐらいは行けるんじゃないだろうか。私はそう考えて彼に提案した。

「ねえ、昔はどこにも行けなくて、ハワイに行ったふりして遊んでたじゃない?」
「そんなこともしてたっけねぇ。なつかしいなー。フライトアテンダントと乗客ごっことかもやったよね。」

ああ、私はその話しを思い出してけらけら笑い出した。クレームばかりつける客、っていうのをやってて、彼がものすごくおかしかったのだ。

「だから、今度は本当に行っちゃわない?リゾートとか。」
「ハワイに行きたいの?」
「うん、ハワイに行こうよ。近いし、海も綺麗だし。」

国内はちょっと心配だが、外に出てしまえば、そうそう見つからないだろう、と思った。

「焼けそうだけどな……。」

と、言葉を濁していたけれど、結局オッケーしてくれた。私は、佐藤ばあにいろいろ知恵を授けてもらって(別々に行くように言われた)、コナ空港で、彼を見つけた時は小躍りせんばかりだった。



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