めぐり逢えたのに
それから、その鳥は何事もなかったかのように、くるりと向きをかえて、とことことこと妙なジャンプ歩きをしながらどこかへ消えてしまった。

リゾートの散歩道にうずくまっている自分たちの姿が滑稽で私は吹き出してしまった。

彼は、興奮して怒った。

「襲われたらどうしよう、って本当に怖かったんだから、そんなに笑うなんてひどすぎるでしょ、万里花さん。」

それでも私の笑いは止まらず、くくくくとお腹をよじらせながら、腰をぬかさんばかりに座り込んでる彼に手を差し伸べて立たせた。

物事にはあまり動じない彼が、興奮して怒った姿を見たのも初めてだったし、あんなに怯えていたのに、とっさに私を守るようにしてくれたのにも感激して、私は上機嫌だった。

それに、私は、あの、大きな鳥が決して人を襲ったりしないことを知っていたから、怖くもなんともなかったのだ。
一見野鳥みたいに見えるけれど、ここにいる鳥はみんな飼われていて、大きな鳥は羽を切られて飛べないようになっている。

しかも、大半は鑑賞用によそから買われてきた鳥たちだ。


< 187 / 270 >

この作品をシェア

pagetop