めぐり逢えたのに
私は、一緒に旅行に行ってからますます拓也の事が好きになっていってた。だから、この頃、私は、拓也のことをもっと知りたくなっていたし、私のことももっと知って欲しい、って思っていた。

そんな風に言ったら、

「万里花さんのことかぁ。万里花さんのカラダなら隅々まで知ってるけどね。」

っていって私を愛撫してくる。

私は、ああ、また丸め込まれちゃうなあ、って思うのだけれど、怒る前に気持ちよくなってしまって、たいていは彼に抵抗できなかった。

「それで?万里花さんはオレの何が知りたいの?」

拓也はベッドの中で私に聞いてきた。

「ん―—、誰と仲がいいか、とか?」
「万里花さん」
「だから、友だちでは誰と仲がいいか、とか、出身はどこ、とか?」
「友だち……田中一郎。出身は、佐賀。」
「田中一郎……って、役所のサンプルネームじゃあるまいし、誰?」
「いや、だから友だち?」
「もーーっ。」

彼は私を丸め込むなんてお手のものだったし、私たちの会話はこんな風に虚実おり混ざることもよくあったから、一体彼の言う事の何が本当で何が嘘なのか時々わからなくなることがあった。


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