めぐり逢えたのに
嬉しくなって、私は、佐々倉の前だというのに、拓也の首にまとわりついてキスをせがんだ。

「佐々倉さんの目の前だよ、少しは遠慮したら?」

口とは裏腹に、拓也は私の腰の下辺りに手を回してくる。そっと触るその指先が私をさらに挑発する。

「『戸川のマリカ様』に遠慮の文字はない。我慢の文字もない。キスして。今すぐ。佐々倉さん、ちょっとあっちに行ってて?」

私は佐々倉を追い出し、ねっとりとした唇を拓也の唇に吸いつけた。
もしかして、佐々倉が廊下から私たちを盗み見してたかもしれないけど、そんなことは構わなかった。佐々倉が見てるならなおのこと、もっと激しくしたい……。

拓也は熱い吐息を吐きながら、私のスカートにするりと手を入れて来て、私は危うく声をあげそうになる。

私は、佐々倉に見せつけたい、という気持ちが心のどこかにあった。私の絡みつくようなキスに応じた拓也にも、誰が私の恋人なのかはっきりさせたい、という気持ちがあったのかもしれない。

先々のことに漠然と不安を感じていた私たちは、そんな風にお互いの関係を明らかにしておきたかったのだと思う。



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