めぐり逢えたのに
私は、そうとうなピッチで飲んでいたし、ほとんどやけ食いのように見境なく食べて、ひどく気分が悪かった事は確かだったので、聞こえなかったふりをして、(介抱したそうな)佐々倉を振り払って自分の部屋にたどり着いた。
佐々倉のあんなセリフを聞いた後では、部屋に入れるわけにはいかないではないか。

部屋に着くと、拓也はいなかった。こんな時に仕事!
私は、飛び込む胸がないのに心底ガッカリした。今夜は拓也にやさしく抱きしめてもらいたかった。

テーブルの上にはペットボトルの水とメモが残してあった。
メモには、

   飲み過ぎには注意。
   遅くなるけど帰ってくるから。
   先に寝てて。後からおそっちゃう。

隅っこに小さく描かれたハートマークを見たら泣けてきて仕方がなかった。

拓也が望んだように、佐々倉の代わりに、拓也と一緒に行けたらどんなに良かっただろう。子どもを作ろうか、と言ったのが佐々倉でなく、拓也だったなら!

私は茫然と涙をこぼしながら、カウチに座って拓也を待った。
夜が白々と明けるころ、ぐったり疲れきった拓也が戻って来た。

「万里花さん?! こんなところでどうしたの。」

暗い中、着替えもせずにぼーっと座っている私を見てさすがに驚いたようだった。私は拓也に抱きついた。

「こんな生活……、もううんざり!私は幸せになりたい。私は拓也と一緒にいたい。ずっと一緒にいたい。」

私は拓也の服を脱がせながら、拓也の唇に吸い付いた。それから、自分で服を脱ぎながら、今度は拓也の首すじを強く吸った。
ほとばしるような激情が私を襲っていた。



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