めぐり逢えたのに
佐々倉は……、といえば、相変わらず戸川でのクレーム処理に明け暮れていた。

唐沢美穂のおかげで散々な目にあっていたのだが、それでもいきり立つ事なく淡々と毎日をこなしていた。しかし、今までの室長としての仕事だけでなく、業務部長としての仕事も徐々に任されるようになってきており、うわさ通り、近いうちに国内業務部長に昇進するかもしれなかった。

最近副社長に就任した上司の田中が、佐々倉を呼び寄せた。

「佐々倉くんを見込んで、一つお願いがあるんだが……、近いうちに佐々倉議員と一席設けてくれないかね。」
「はあ……」

曖昧に返事をしながら、佐々倉は田中の真意を慮っていた。
目的は誰だろうか?

「聞く所によると、佐々倉議員は、雨宮議員とも懇意にされているとか。」

雨宮議員……?目的は国交省か。

今さら?まさか、パイプが全くないってこともないだろうに。
多少唐突な感じは否めなかったが、確かに雨宮議員と懇意になっておいて損はしないだろう。

「分かりました。日にちなどは先方のご都合に合わせる、ということでよろしいですか。」
「もちろんだよ。」
「こちらの方はどなたがいらっしゃる予定ですか。」
「ま、私と新社長じゃないか。」
「承知しました。」



< 239 / 270 >

この作品をシェア

pagetop