めぐり逢えたのに
佐々倉は引き出しを開けて、太いため息をついた。

佐々倉が取り出したのは一枚の離婚届だ。
岳父が亡くなった今、万里花が自分と一緒にいる理由はないように思えた。

元々、紙の上だけの契約で、一緒に住んでもいない。
万里花は事実上小野寺拓也と同棲している。自分が万里花と離婚すれば、晴れて小野寺と暮らせるというわけだ。

それが万里花の望みには違いなかった……。

そうすれば、佐々倉も戸川を離れられる。
元の銀行に戻るのは無理かもしれないが、親父に口をきいてもらえば、適当な仕事が見つかるだろう……。

万里花と別れて戸川を離れる……。
佐々倉は、もう一度太いため息をついた。



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