めぐり逢えたのに
私はそれから、ずっと電話ばかりかけていたので、佐々倉から連絡が来た事に気付いたのはお昼を買いに外に出ようとした時だった。

「ごめんなさい。連絡もらってたの、全然気付かなかった。」
「良かった!今からちょっと抜け出せない?」
「ええ、今?何で。」
「詳しい話をしているヒマはないんだけど、ちょっと君の実家に行かせてもらいたいんだ。幸いお義母さんはいらっしゃるし、出来たら君にも来て欲しくて。」

離婚届が頭によぎった。

「今?今晩じゃだめなの?」
「とにかく時間がないからすぐに行きたい。」

私は、訝しがりながらも、佐々倉の様子に気圧されて、実家で待ち合わせをすることにして電話を切った。

離婚てそんなに慌ててするものだろうか?
タクシーの中で考えたが、どう考えてもそれは違うような気がした。

実家に到着すると、ちょうど佐々倉も家の中に入っていくところだった。佐々倉は、私の姿を認めると安心したように微笑んだ。

「来てくれてありがとう。万里花の助けが必要かもしれないから。」
「助け?」

ますます何のことかさっぱりわからなかった。



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