めぐり逢えたのに
「事情?」

佐々倉は、聞き返した雨宮議員の顔をじっと見据えた。
雨宮は知っているのか?今、これをぶちまけて大丈夫なのか?

「そのことで戸川が脅されて、鈴木洋一に多額のカネが渡っていた件ですか?」

一同の顔色がさーっと変わるのが佐々倉にもわかった。

やはり、雨宮はリコール隠しの理由を知らなかったのだ。そして、戸川と田中は、佐々倉が知っていたことと、この場でぶちまけたことへの驚きであった。

「どういうことだね?」

雨宮は努めて平静を装ってはいたが、不審な表情は隠しきれていなかった。

佐々倉は確信する。国交省はやはり知っていたのだ。いつどのタイミングでカードを切るか、向こうもこちらの出方を伺っていたに違いない。だから雨宮を使ってリコールの件だけ匂わせた……。

「我が社に、クレームを入れてきた鈴木という人物がどうもリコール対象になる不具合だということに途中から気付いたらしいんですよ。
ウチの対応が遅れた間に、あちこちで言いふらしたらしく、さらに大胆にも鈴木は戸川に脅しをかけてきた。」

戸川と田中が恐る恐る佐々倉の方を見る。全部ぶちまけるつもりなのか、と言外にほのめかしていた。


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