めぐり逢えたのに
「君は? 万里花はどう思ってる? 離婚したいのか、したくないのか。君自身はどう思ってるんだ?」
「………」

今度は私が無言になる番だった。

「わからない。正直言うと……、今のままが一番いいの。」

私は、それがズルい逃げだと知っていて、そう答えた。

「……ごめん。オレにはそれがキツすぎてできない。君のお父さんもしおりもいなくなった今、オレが戸川に関わる意味が見いだせないんだ。君はオレがいるせいで小野寺と一緒になれない。それに、オレが戸川に貢献したところで誰が喜ぶ?」

「あなたは、『戸川』を離れるつもりなの?」
「君と離婚したら、『戸川』にはいられないよ。」
「だけど、あなたは、『戸川』の一大ピンチを救ったのよ。あなたがいなくなったら『戸川』はどうなるのよ?」
「『戸川』は立派な大企業だから、どうとでもなるさ。」
「じゃ、誰がパンテェールノワールを作るの?私は、あんなだっさいジャガーが街中を我が物顔で走り回るとか許さないから。」



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