めぐり逢えたのに
結局ビーチでは、胸の辺りが強調される、シンプルだけど大胆なカットのビキニを着た。

上が細かい花柄で首の後ろと背中が紐になっている。下はショッキングピンクでやっぱり両脇を紐で結ぶタイプの水着だった。
私としてはかなり頑張ったつもりだ。私が水着になって、日焼け止めを塗っていたら、彼が、

「背中に塗ろうか?」

と、私が手にした日焼け止めを取って、背中に塗りはじめた。私は、もしかして?!とちょっと(かなり)期待した。でも、彼は、

「ちゃんと塗っておかなきゃ焼けちゃうんだよねー。」

って、じっくり塗ってくれたけど、それはまるで、看護師が薬を塗るような感じだった。
クリームを塗る手を休めずに、

「万里花ちゃん、これ、勝負水着でしょう?」

少し呆れて、少しおかしそうに言うので、私は悲しくなった。

「そうだよ……、だって、やっぱり、もう少し、恋人らしいことしたいもん。」
「恋人らしいことって?」

だから……、せめて、抱きしめてもらったり、キスしてもらったり……、

って言いたかったけど、恥ずかしくて口にだせなかった。

「やっぱり、お、小野寺さんにとっては私は子どもすぎるのかな……?」
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