めぐり逢えたのに
彼は、私の横顔をじっと見て、それから空を見上げた。

「そうかなー、そういうことなんだろうなー。」

半ば独り言のように呟いたその言葉が私にはショックで、

「やっぱり、子どもすぎて、その……、魅力ないのかな?」

って言うと、彼は、例の、包み込むような微笑みを浮かべて応えた。

「そういうことじゃないんだよね。」

彼は、しばらく考えてから、またにっこりと笑った。

「慌てなくていいからさ、大人になった時のためにお楽しみは取っておこう。」
「お、大人だよ?!」

私が反論すると、今度は彼はからからと突き抜けるような笑い声をだした。

「まだ子どもだよー。だって、パパの呪縛が解けてないじゃない。それに、今だとオレも呪縛にかかっちゃいそうでちょっと怖いし。」

彼は、わかったようなわかんないようなことを言った。でも、私と、その……、恋人らしいことをするつもりがないことはよくわかって、私はがっくりとしていた。私が肩をおとしていると、彼は、顔中で笑みを作って、

「ホラ、今日は楽しい一日にしよう、っていったでしょ。海に行く?」

私の手をとって、波打ち際まで駆けていった。



楽しい一日だったけど、期待はずれの一日でもあった。



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