めぐり逢えたのに
それから彼は私をゆっくり抱きしめた。
彼がこんな風に私を抱きしめてくれるのは3回目だ。あんまり少なすぎて、どの時のこともはっきりと憶えてるのが悲しいけど笑っちゃう、なんて頭の中で考えていた。

私はずっとずっと彼に抱きしめていてもらいたかったから、声も出さずに立ちつくしていた。彼はずっとずっと私のことを抱きしめていた。

まるで時が止まってしまったようだった。

どのくらい時が流れたのだろうか。

だいぶしてから、彼は、私の顔を見つめながら、右手で私のあごをちょっと上向けるとそのまま唇を重ねた。

優しくて温かいキスに私はうっとりした。彼は私を抱きしめたまま、今晩は泊まって行けよ、と耳元で囁いた。
ずっと、このことで言い合いになっていたので(彼のいいなりだったのだけど)、私はとても驚いた。


「いいの?!」



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