めぐり逢えたのに
次の日、私はくすぐったさを憶えて目を覚ました。

目を開けると、彼の顔がいきなり飛び込んで来た。彼は私が起きたのに気がつくと、顔をほころばせた。

彼は私の体をくまなく触ったり舐めたりした。そのうちに気持ちが良くなって、体に電気が走ったようにぞくぞくしてきて、私は目をつぶってされるがままにじっとしていた。

それから、私たちは、夕べよりもずっと大胆になっていていろんなことをした。

彼の吐息とか、舌先の感覚、手のひらの感触とか、彼の声なんかを思い出すだけで、今でも下腹部がきゅっとなる。

私は、もう、両親のことも学校のこともどうでも良くなっていて、ただただこの愉悦に満ちた時間を一分でも引き延ばしたいとしか考えていなかった。だけど、程なくして彼が稽古に行かなくてはならない時間がやってきた。彼はぎりぎりまで私を抱いて、それから大慌てで出て行った。

出て行く時に、私に長い長い口づけをした。彼の濡れた唇はしっとり柔らかくて蜜のようだった。それから、彼の舌と私の舌がからみあって、それだけで体の芯がしびれて、自分がどこかに遠くに飛んで行ってしまうような気がした。

今でも私はあれ以上に濃厚で甘いキスを知らない。

彼を見送ったあと、私は、しかたなく自分の服を来て、少し片付けをしてから部屋を後にした。
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