めぐり逢えたのに
半年程すぎると、私はだいぶん落ち着いてきた。

一通り遊んで飽きちゃった(半年しか経ってなかったけど)のもあるし、好きでもない人と寝たところで楽しくも面白くもなんともないことも分かって来たからだった。むしろ、次の日なんとなく後ろめたい気分になることの方が多くて、その度にいつも自己嫌悪と相手の男の子に申し訳ない気持ちになっていた。

あの時のように、楽しくて嬉しい気持ちになることができなかった。


その頃私は太鼓を始めた。

友美には「なぜ太鼓?」って、笑いながらからかわれたけど、一心不乱に太鼓を叩いていると、いろんな雑念がすうっと消えていく。

太鼓の荒々しいリズムが、私の内側から湧き出てくる彼への気持ちをどこかに誘ってくれていくようで、叩いた後、彼と感じた後のように軽く放心していることがあった。

誘われて面白半分に始めた太鼓だったけれど、私は、他の大学のサークルに入って割と真面目に太鼓をやっていた。(私の大学にはそのようなサークルはなかった。お嬢様好みの趣味ではないらしい。)
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