めぐり逢えたのに
「45回目」

佐々倉直樹と二人きりになって私がため息をついた時に佐々倉が指摘した。

「何がですか。」
「ため息の回数ですよ。会った時からずっとため息ばかりついているので、数えてたんです。僕と一緒にいるのはそんなに嫌ですか。」

佐々倉は特に落胆した様子も見せず、淡々としていた。

「それとも、小野寺さんのことがまだ忘れられませんか。」

何で知ってるの?

私は目を剥いた。 

私の驚いた顔に動じる事もなく、やっぱり佐々倉は淡々としていた。

「結婚しよう、っていう相手ですからね、僕も少しは調べましたよ。戸川のおじさんも知らない仲じゃないし。」
「あなたは、お見合いだって知ってて来たんですか?」
「知らなかったんですか?」
「こっちはだまし討ちです。」
「そうですか、戸川のおじさんらしいですね。」

クスッと笑う佐々倉の余裕が腹立たしかった。

「さて、これからどうしますか、ホテルでも行きますか。」

何の鷹揚もない口ぶりに私はイラッとした。

「いきなりですか。」
「だって、他にすることもないでしょう。」
「いえ、帰らせて頂きます。」

私はその場で席を立った。


絶対断ってやる、断固として断ってやる。私は固く決意して家に帰った。



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