きみと、春が降るこの場所で
「―………― ― ―」
小さな呼吸はやがて耳の奥に篭って、外の音は聞こえなくなる。
全てが閉じていくような感覚の中で、肩に触れるぬくもりは感じられたけれど、手のひらを握ってくれているはずのお父さんの体温は、もうわからない。
目も、開いているはずなのに、真っ暗なだけ。
最後の最後まで、苦しくはないなんて。
変な所で優しい病気だな、なんて思って、心の中で笑った。
肩に触れたぬくもりは、きっと、朔だ。
お父さん、朔。
わたしの幸せが、どうか2人の幸せになりますように。
そしてその幸せが、また別の誰かに繋がって、止まりませんように。