きみと、春が降るこの場所で
「どうだろう。明後日はちょっと、自信がない」
ならなんで、来年なんて言ったんだ。
問い詰めなくても、答えはあった。
詞織の言葉と、行動と、その姿の中に。
詞織は、本当に明後日を生きている事に自信がないわけじゃない。
ただ、今より少し先か、もしくはずっと先の明後日に希望を持てないんだろう。
多分、“来年”は詞織にとっての限界で。
それより先の未来は、明後日すら危うい、そんな日々。
「朔は、違うの?」
けれど、真っ直ぐに俺を射すくめた視線は、別のものを湛えていた。
「わたしがいなくても明日はくるし、朔がいなくても、わたしの明後日はあるかもしれないよ」
「ごめん」
確信した。詞織の言葉を聞いて、咄嗟に口を衝いて出たのは、謝罪だった。
俺はどこで詞織を脆くて弱いやつだと判断したんだろう。
きっと、詞織が病気だと知ったその時から、決め付けていた。
病気だからとか、そういう話をしているんじゃないんだ。
詞織はただ、自分と俺を同じラインに立たせて、考えている。
“もうすぐ死ぬ”
それは詞織にだけ当てはまるわけじゃない。
俺にだって、通りすがりの誰しもにだって当てはまる、大切なこと。