きみと、春が降るこの場所で


6月の終わり、長く続いた検査の結果が出た日。


8月半ばまでの約1ヶ月半、詞織の退院が許可された。



初めて入院をした日以来、一番長い帰宅期間だと笑っていたから

俺はそれを素直に喜んだ。



ただひとつ。

余程退院を心待ちにしていたのか、いつもより嬉しそうに笑う詞織の顔色が、少しだけ雨に濡れた日の色に似て見えた。


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