きみと、春が降るこの場所で


「学校は?」


ここぞとばかりに聞いてみる。

父親の前で地雷を踏む事は避けたかったけれど、今を逃したら詞織の事を何も知れない気がしたから。


「一応ね、通信の高校には通ってるよ」


「一応か」


「うん、一応」


一応の意味が、仕方なくという意味なのか、行きたくないけれどという意味なのかはさすがにこの場では聞けない。

通っていると言っても、登校をしているわけではないだろうし。


「中学はどうしてたんだ?」


「うーん…どうだっけ。最初の1週間くらいは通ってた気がする」


制服を着て通学路を歩いた記憶はある。

けれど、それが長く続いた覚えはないらしい。


彰さんの顔を窺いながら話を聞いていると、バックミラー越しに目が合って、ひとつ頷かれた。


聞いてもいいという事か。

俺が聞いて、詞織が答えるのなら、それでいいと、言ってくれているのかな。


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