きみと、春が降るこの場所で
「俺は放任されてるんで。むしろ彰さんが嫌味言われますよ」
俺がどこで何をして、誰と居ようと興味もないくせに、自分らのテリトリーに入り込まれると馬鹿の一つ覚えのように威嚇して当り散らすような人だ。母も、父も。
そんなの、彰さんに申し訳ない。
けれどそれ以上に、俺が普段はあんな人間と共に暮らしているのだと思われたくない。
「そうだね。けれど、私は大丈夫だよ」
「なにが…」
「朔くんがどんな人なのか、君を見て判断したんだ。詞織の目から見た朔くんではなく、私から見た朔くんを気に入ったんだ。だから、そんな風に無闇に両親を下げなくてもいいよ。朔くんは朔くんだろう」
人を下げる事で、自分が上がるわけではない。
それを遠回しに言われたようで、自分の幼さが情けなくなる。
彰さんは、人を見ている。
俺の事も、見てくれていたんだ。
「さあ、詞織と遊んでおいで」
まるで自分の息子と娘を扱うように、父親の顔でいうから、つい素直に言う事を聞いてしまう。
空のコップをテーブルの上で回して遊ぶ詞織をつれて2階へ行くと、尚更俺が兄で詞織が妹のようだと思った。