きみと、春が降るこの場所で
彰さんは朝早くから仕事に出掛けて、帰るのは大体7時過ぎ頃か、もう少し遅い時間。
ただでさえ朝が早いのに、詞織の朝飯と昼飯を用意するのは大変だろうと思って、夏休みに入ってからは俺が昼飯を作っている。
食材は揃えてくれているから、何でも作れるし何でも食えるんだ。
「朔ー、今日のおやつプリンがいい」
「プリン?そんなのねえよ。アイスでいいだろ」
エアコンはついているけれど、火のそばにいると当然だが汗が止まらない。
タオルで額や首筋の汗を拭いながら冷蔵庫を開けてみるけれど、プリンは見当たらない。
「やだ。プリンがいい」
カウンターに肘を付いてぶーぶーと文句を言う詞織の口にプチトマトを押し込む。
最近こいつワガママなんだよな。可愛いけれど、甘やかしたらロクな事にならない。
この前だって、ゼリーが食べたいだとか言い出すから、1から作ってやった。
「プーリーン!!」
「うるせえ。ほら、トマト食ってろ」
皿にプチトマトを乗せて詞織の前に置く。
プリンプリンとうるさい声は止んで、黙々とプチトマトを食べ出す。この扱いやすさだけは、褒めてやってもいい。怒るだろうから、何も言ってやらないけれど。