きみと、春が降るこの場所で
程なくして茹で上がったうどんを皿に盛り、錦糸卵やカニカマ、裂いたササミを乗せる。
昨日、明日はオムライスがいいとリクエストがあったけれど、暑いし面倒だからラクなうどんにした。
「あ、お前トマト全部食ったのかよ」
「え?ダメだったの?ごめんね」
「別に…普通のトマトあるからいいけど」
皿に残った大量のプチトマトのヘタを捨てて、野菜室から瑞々しい大きなトマトを取り出す。
途端に目を輝かせる詞織にはカニカマの残りを食わせておく。
子供でもこんなにあっさり引っかかりはしないだろう。ごねられても面倒だけれど、絶対にこいつは人に騙されやすい。
トマトが特別好きというわけでもないはずなんだけれどな。何でもつまみ食いしたがるし、とにかくよく食べる。
「あとで一緒にプリン作ろうね」
「おー」
適当な生返事に、やったぁ、なんて嬉しそうに言うから、嫌な予感がする。
まあ、アイスでも食わせとけば何とかなるよな。