きみと、春が降るこの場所で
昼飯を食べ終えて暇になったものだから、テレビのリモコンを手に取る。
夏休みといえども、昼間のテレビなんて高が知れている。
明らかに泥沼に突入しそうな昼ドラを観せるわけにはいかなくて、テレビショッピングを2人で観賞。
「あの掃除機っていいやつ?」
「さあ?掃除機なんかどれも同じだろ。つか、家電屋に行って自分で確かめる方が絶対いい」
「ふぅん」
たいして興味がないのか、どこからともなく取り出したルービックキューブをいじり出す詞織。
俺も興味ないんだから、2人で遊ぶもん出せよ、馬鹿。
「なー、詞織。ゲームしよう」
「なんの?」
「なんかねえの?」
テレビゲームは見当たらないし、外に出るのは論外。思い付くゲームといえば人生ゲームとかそんなの。
「部屋にジェンガあるよ」
「お。いいじゃん。それやりたい」
1面も揃えられなかったルービックキューブをテーブルに置いて、詞織が立ち上がる。
リビングを出て行く背中を見て、ホッと一息ついた。
これでプリンの事は忘れてくれるだろう。
どうしても食べたいって言うんなら、後で彰さんに買って帰ってもらえばいい。