きみと、春が降るこの場所で
「お父さん、ご飯ー!」
バターン、と乱暴にドアを開けた詞織がブランケットを翻して彰さんに飛び付く。
腰に打撃を受けた彰さんが少しまずい感じの顔をしているのを見て、失礼だけれど笑ってしまった。
いつも通りの、日常に馴染んだ食卓。
並ぶ料理は少なめで、代わりに俺のためのお粥がドンと置かれている。
彰さんは珍しく徳利ではなく、チューハイを片手に餃子をつつく。
詞織は詞織で、迷い箸は良くないと彰さんに怒られて。
俺は、あまり食欲がなかったはずなのにお粥を食べ切って、残ったおかずに箸を伸ばしていて。
こんな日々が、続くような気がした。