きみと、春が降るこの場所で
数時間後、暇潰しに借りた白一色のミルクパズルと格闘する俺の膝で、詞織は規則正しい寝息を立てていた。
少し前までは俺が持ってきた色鉛筆で絵を描いていた覚えがあるけれど、パズルに集中していたから、正確にはわからない。
つか、これ難し過ぎるだろ。
たかが120ピースパズルだと侮っていた俺が馬鹿だった。
ミルクパズルというやつは、奥が深い。
こんなんを何度も完成させてはバラしてを繰り返しているという詞織は、絵といいパズルといい、器用過ぎる。
俺が不器用なのか?違うよな。
ようやく3分の1を埋め終わって、ぐっと伸びをする。
完成したってどうせ真っ白なんだと思うと、ここでやめてもいい気がした。
白。
白というと、詞織が待ち詫びているあの色だ。
昼間よりも深く染まる曇天は、今にも泣き出しそうだけれど、それが水だと困る。
窓枠に結露が出来ているから、寒さからして雨粒にはならないだろう。
無意識に詞織の髪を撫でながら、ぼんやりと窓の外を眺める。
そろそろ詞織を起こしてケーキを食べさせないと、夕飯が入らなくなる。
置いて帰って明日食べる、でもいいのだけれど、出来れば一緒に食べたい。
だから、頼むよ。
雪が降ってるぞ、って起こしてやりたいんだ。