小夜啼鳥が愛を詠う
ああ、BLだわ……野木さんの好きな。
でも野木さん、大好きな明田先生の濡れ場でも、本当にうれしいのかしら。
さすがにショック受けるかしら。

再びうつむいた私とは対照的に、光くんママはパッと顔を上げた。

「あ。そう。男。……あ、ちょっとホッとした。……少なくとも、相手を妊娠させなくて済むわね。……いや、でも、エイズとかうつされると怖いな。」

「……。」

へ、返事できない。

いや、確かに、妊娠はないけどさ……えええええ?

何?

この、アブノーマルな状況を受け入れてる光くんママに、私はポカーンとした。

すると、光くんママは自嘲的に苦笑して、言った。
「私が光を産んだんは高校1年生の冬。……相手は好きなヒトやったけど……正気を失ってたヒトに強引に押し倒されたん。……だから、さっちゃんの気持ちはわかるつもり。でも、実の娘のように、さっちゃんのことが好きやから、心配なんやわ。……さっちゃんには、ちゃんと、手順を踏んで、好きな人と愛し合って、結ばれて、幸せになってほしいねん。」

……それって……。

突然、思い出した。

光くんの本当のパパは……

「……光くんは……ずっと、発情期なのでしょうか。」

やだ。
変なこと聞いちゃった。

動揺してるわ、私。
どう言えばいいのか、わからない。

本当に、兄妹の間の子供なの?

いや、それより、今の光くんママの言い方……お兄さんにレイプされたってこと?

でも、お兄さんのことが好きだった?

……わからないことだらけで、何から聞けばいいのか、わからない。
いや、聞いちゃいけないことなのかもしれない。

でも私は、とても自分の中で消化できそうにない。

しばし考えて、私は、首を傾げて私を見ている光くんママに、こう聞いてみた。

「扇屋の彩瀬さんは、幸せだったのでしょうか。」

光くんママの目が大きく見開かれた。


しばしの沈黙のあと、光くんママは私の手を握った。
そして、びっくりしたように私を見た。
「熱っ!さっちゃん、熱あるんちゃう?……ごめんごめん。しんどかったのに、光を心配して出てきてくれたんや?……てか、もしかして、親御さんに黙って出てきた?大丈夫?」

……はぐらかすのかな。

「少し寒くて熱があったみたい。でも今は暑い……。ママは……怒ってるかも……。」

ぐらりと、目の前が少し回った。

確かに、さっきより熱が上がった気がする。
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