小夜啼鳥が愛を詠う
「発情期?」
私がそう聞くと、少し離れたところにいたパパが、眉毛をひそめて非難の目で私を見た。
……あとで怒られそうだなと思いつつ、私は頼之さんの返事を待つ。
「まあ、そんなとこや。高校生男子やし、当たり前の衝動かもしれんけどな、……だから、実際のところは、実の父親が降臨しとる確証はない。単に光が見境なく発情しとるだけかもしれん。……けど、あれの父親のあおいに対する執着心は筋金入りやったから……俺らは、光に、ちょくちょく、父親を感じるようになっとる。」
頼之さんはそう言ったあと、コーヒーを一口飲んで、改めて言った。
「光の父親は、あおいの戸籍上の兄や。血はつながってない。」
あ……そうなんだ。
私はホッとして、脱力した。
よかった……。
厳密な意味で、近親相姦じゃなかったんだ。
じゃあ、血が濃すぎるとか、そーゆー問題もないのよね。
「それが、彩瀬さんですね?」
私の確認に、小門夫婦はシンクロしてうなずいた。
「あおいの戸籍上の父親が遊女に産ませた子が彩瀬。あおいの母親が精子バンクから精子の提供を受けて産まれたのがあおい。……少なくとも、あおいの両親は、そう信じてる。でも、それもちょっと違ったみたいや。……まあ、遊女の子ぉやから、父親が誰かなんか本人が申告しても怪しいもんやろ?こっそりDNA鑑定してもろたから確実や。吉川彩瀬は、吉川家には誰一人血縁者はいなかったわけや。」
……さくさくっと、すごく濃い情報を頼之さんはいくつも並べて見せた。
私は、とても消化できず、ぽかーんとした。
精子バンク?
DNA鑑定?
思わず私はパパを見た。
うちは普通の家族じゃない、って言ってたけど……光くんママの家庭環境に比べたら、全然普通な気がする。
「……そっか。……それじゃ、彩瀬さんが光くんママに執着したのは、家族や妹としてじゃなくて、最初から守るべき存在として唯一無二の存在だったんですね。」
自分の言葉に、ハッとした。
……光くんは、違う。
どんなに大好きでも、彩瀬さんが憑依しても、ママだもん。
産まれた時から、ううん、産まれる前から、自分を守り育ててくれた……ママだもん。
光くんがいつまでもふわふわしてるのは、愛するママとの相対的な関係のせいかもしれない。
……光くんって、すごく綺麗なだけじゃなくて……何てゆーか、「王子様」じゃなくて「姫」なのよね……高校生男子なのに。
ご両親だけじゃなくて、弟の薫くんも、……私も、光くんを守らなきゃって、本気で思ってるもんなあ。
まあ、薫くんは光くんだけじゃなくて、私のことも守るべき対象にしてくれてるけどさ。
ちょっと頬が緩んだ。
ふふ……薫くんも「王子様」じゃないな。
もっと強くてたくましい。
薫くんは、戦う「騎士様」?
私がそう聞くと、少し離れたところにいたパパが、眉毛をひそめて非難の目で私を見た。
……あとで怒られそうだなと思いつつ、私は頼之さんの返事を待つ。
「まあ、そんなとこや。高校生男子やし、当たり前の衝動かもしれんけどな、……だから、実際のところは、実の父親が降臨しとる確証はない。単に光が見境なく発情しとるだけかもしれん。……けど、あれの父親のあおいに対する執着心は筋金入りやったから……俺らは、光に、ちょくちょく、父親を感じるようになっとる。」
頼之さんはそう言ったあと、コーヒーを一口飲んで、改めて言った。
「光の父親は、あおいの戸籍上の兄や。血はつながってない。」
あ……そうなんだ。
私はホッとして、脱力した。
よかった……。
厳密な意味で、近親相姦じゃなかったんだ。
じゃあ、血が濃すぎるとか、そーゆー問題もないのよね。
「それが、彩瀬さんですね?」
私の確認に、小門夫婦はシンクロしてうなずいた。
「あおいの戸籍上の父親が遊女に産ませた子が彩瀬。あおいの母親が精子バンクから精子の提供を受けて産まれたのがあおい。……少なくとも、あおいの両親は、そう信じてる。でも、それもちょっと違ったみたいや。……まあ、遊女の子ぉやから、父親が誰かなんか本人が申告しても怪しいもんやろ?こっそりDNA鑑定してもろたから確実や。吉川彩瀬は、吉川家には誰一人血縁者はいなかったわけや。」
……さくさくっと、すごく濃い情報を頼之さんはいくつも並べて見せた。
私は、とても消化できず、ぽかーんとした。
精子バンク?
DNA鑑定?
思わず私はパパを見た。
うちは普通の家族じゃない、って言ってたけど……光くんママの家庭環境に比べたら、全然普通な気がする。
「……そっか。……それじゃ、彩瀬さんが光くんママに執着したのは、家族や妹としてじゃなくて、最初から守るべき存在として唯一無二の存在だったんですね。」
自分の言葉に、ハッとした。
……光くんは、違う。
どんなに大好きでも、彩瀬さんが憑依しても、ママだもん。
産まれた時から、ううん、産まれる前から、自分を守り育ててくれた……ママだもん。
光くんがいつまでもふわふわしてるのは、愛するママとの相対的な関係のせいかもしれない。
……光くんって、すごく綺麗なだけじゃなくて……何てゆーか、「王子様」じゃなくて「姫」なのよね……高校生男子なのに。
ご両親だけじゃなくて、弟の薫くんも、……私も、光くんを守らなきゃって、本気で思ってるもんなあ。
まあ、薫くんは光くんだけじゃなくて、私のことも守るべき対象にしてくれてるけどさ。
ちょっと頬が緩んだ。
ふふ……薫くんも「王子様」じゃないな。
もっと強くてたくましい。
薫くんは、戦う「騎士様」?