小夜啼鳥が愛を詠う
「なになに?……わ。これ、このヒト?」
私のスマホを横から覗き込んだ玲子さんに、御院さんが優しい視線を向けた。
うわぁ……。
それだけで、2人がうまくいってるんだなあ、って伝わってくる。
「うん。たぶん。……玲子さん、お茶、美味しい。これ、なぁに?」
「さあ?御院さんが京都で買って来てくださるお茶……宇治茶?」
「ああ。宇治田原で栽培したお茶を、城陽の販売店で購入してるけど、宇治茶やで。」
いたずらっ子のように御院さんが教えてくれた。
……ほんとに……仲良しみたい……。
寄り添ってなくても、触れてなくても……視線と声がイチャイチャしてる……。
いいなあ……。
「署名がありませんが、裏面を拝見することはできますか?」
「もちろんです。どうぞ。」
光くんママに尋ねられ、御院さんは白い手袋を装着して絵をひっくり返した。
私もソファから立ち上がり、絵のそばに近寄った。
油絵額の裏蓋を開けると、中には木枠に貼り付けたキャンバス。
なるほど、文字が記されていた。
「なんて書いてあるの?名前?」
「……名前は……これかな。o...dagiri。オダギリさん?」
小田切?
小田桐?
「こっちは?絵のタイトル?」
「んー?Those Were The Days。だって。はい、さっちゃん、意味わかる?」
突然、光くんママにそう問われて、私は、うっと詰まった。
「……それらは……日々だった……。」
直訳してみて、私は泣きたくなった。
これでも、中学の頃からずっと英語の成績、いいんだけど……。
「懐メロですか。『悲しき天使』の原題。」
御院さんが助け船を出してくれた。
光くんママは、御院さんにうなずいて、私の拙い訳はスルーしてくれた。
「そうですね。慣用句的に『あの頃はよかった』と昔を懐かしむ表現ですけど、この場合は、この絵のモデルに邦題をかけたと見るべきでしょうね。」
そして、光くんママは、御院さんに改めて笑顔で言った。
「職員録は閲覧可能ですか?……多分、こちらのお寺の関係者の絵じゃないかと思うのですが。」
御院さんは、うなずいてから、パソコンを立ち上げた。
「データベース化してるので、ちょっと待ってください。オダギリ……。あれ?」
御院さんは、あまりパソコンが得意じゃないらしい。
見かねた玲子さんが、御院さんの横にぴたりとくっついて、キーボードに手を伸ばす。
「オダギリさん。職員にはいないわね。……待って。県内の寺院関係者も当たってみます……。」
玲子さんは、そう言って、カタカタとキーボードを弾いた。
私のスマホを横から覗き込んだ玲子さんに、御院さんが優しい視線を向けた。
うわぁ……。
それだけで、2人がうまくいってるんだなあ、って伝わってくる。
「うん。たぶん。……玲子さん、お茶、美味しい。これ、なぁに?」
「さあ?御院さんが京都で買って来てくださるお茶……宇治茶?」
「ああ。宇治田原で栽培したお茶を、城陽の販売店で購入してるけど、宇治茶やで。」
いたずらっ子のように御院さんが教えてくれた。
……ほんとに……仲良しみたい……。
寄り添ってなくても、触れてなくても……視線と声がイチャイチャしてる……。
いいなあ……。
「署名がありませんが、裏面を拝見することはできますか?」
「もちろんです。どうぞ。」
光くんママに尋ねられ、御院さんは白い手袋を装着して絵をひっくり返した。
私もソファから立ち上がり、絵のそばに近寄った。
油絵額の裏蓋を開けると、中には木枠に貼り付けたキャンバス。
なるほど、文字が記されていた。
「なんて書いてあるの?名前?」
「……名前は……これかな。o...dagiri。オダギリさん?」
小田切?
小田桐?
「こっちは?絵のタイトル?」
「んー?Those Were The Days。だって。はい、さっちゃん、意味わかる?」
突然、光くんママにそう問われて、私は、うっと詰まった。
「……それらは……日々だった……。」
直訳してみて、私は泣きたくなった。
これでも、中学の頃からずっと英語の成績、いいんだけど……。
「懐メロですか。『悲しき天使』の原題。」
御院さんが助け船を出してくれた。
光くんママは、御院さんにうなずいて、私の拙い訳はスルーしてくれた。
「そうですね。慣用句的に『あの頃はよかった』と昔を懐かしむ表現ですけど、この場合は、この絵のモデルに邦題をかけたと見るべきでしょうね。」
そして、光くんママは、御院さんに改めて笑顔で言った。
「職員録は閲覧可能ですか?……多分、こちらのお寺の関係者の絵じゃないかと思うのですが。」
御院さんは、うなずいてから、パソコンを立ち上げた。
「データベース化してるので、ちょっと待ってください。オダギリ……。あれ?」
御院さんは、あまりパソコンが得意じゃないらしい。
見かねた玲子さんが、御院さんの横にぴたりとくっついて、キーボードに手を伸ばす。
「オダギリさん。職員にはいないわね。……待って。県内の寺院関係者も当たってみます……。」
玲子さんは、そう言って、カタカタとキーボードを弾いた。