小夜啼鳥が愛を詠う
光くんは、翌朝、何事もなかったように私を迎えに来た。
そして放課後、薫くんもまた何事もなかったように、中学のサッカー部に混じっていた。
「ふむ。仲直り……したのか……な?」
「よくわかんないねー。」
半信半疑の野木さんと私を、椿さんが一喝。
「他人の家の兄弟喧嘩なんかどうでもいいわよ!」
そして椿さんは泣きそうな顔で、教科書を指さした。
「それより、期末テスト!わかんないよー。教えてー。」
「……私でよければ。」
結局、こうなるのよね。
毎度恒例の、定期テスト前の勉強会。
最近は、椿さんの彼氏の菊地先輩も参加するようになった。
もちろん菊地先輩は1学年上だから、私たちとは同じ勉強をするわけじゃない。
でも教科書を読むだけで完璧に理解できる光くんをほぼ独占して、菊地先輩は何とか平均点をキープしているそうだ。
完全に私塾と化したアトリエで、明田先生だけがマイペースにキャンバスに向かっていた。
「明田さん、顔色悪い。……体調悪いのかな。」
紅茶を届けに行った野木さんが心配そうに戻って来たけど
「それより、数学!それより、化学!助けてー!」
と、パニクってる椿さんの勢いに圧倒されて、話題が立ち消えた。
期末テストが終わった日曜日。
野木さんはまた、朝秀先生のお家へとうかがった。
焼成後、じっくり3日かけて温度を落とした登り窯から、出来上がった作品を窯出しするそうだ。
今回は明田先生が行くとのことだったので、私は理由を付けて遠慮してみた。
野木さんは、まんまと明田先生と2人きりで京都へプチ旅行となったわけだが……残念ながら、野木さんの望む進展はなかったらしい。
終業式が終わり、冬休みが始まった。
折しもクリスマスイブの日から、私と薫くんは、藤巻くんとともにお寺の別院へ通うことになった。
朝、玲子さんがわざわざ迎えに来てくれた。
「さっちゃんと一緒に出勤できるなんて、心強いわ~。」
車の中で、本当にうれしそうな玲子さんに、不思議な気持ちになった。
心強い?
……どういう意味だろう。
だって、玲子さん、もうずいぶん長くお勤めしてるのに……。
別院の職員ガレージに車を駐めると、玲子さんの表情が変わった。
緊張してるように見える。
そして放課後、薫くんもまた何事もなかったように、中学のサッカー部に混じっていた。
「ふむ。仲直り……したのか……な?」
「よくわかんないねー。」
半信半疑の野木さんと私を、椿さんが一喝。
「他人の家の兄弟喧嘩なんかどうでもいいわよ!」
そして椿さんは泣きそうな顔で、教科書を指さした。
「それより、期末テスト!わかんないよー。教えてー。」
「……私でよければ。」
結局、こうなるのよね。
毎度恒例の、定期テスト前の勉強会。
最近は、椿さんの彼氏の菊地先輩も参加するようになった。
もちろん菊地先輩は1学年上だから、私たちとは同じ勉強をするわけじゃない。
でも教科書を読むだけで完璧に理解できる光くんをほぼ独占して、菊地先輩は何とか平均点をキープしているそうだ。
完全に私塾と化したアトリエで、明田先生だけがマイペースにキャンバスに向かっていた。
「明田さん、顔色悪い。……体調悪いのかな。」
紅茶を届けに行った野木さんが心配そうに戻って来たけど
「それより、数学!それより、化学!助けてー!」
と、パニクってる椿さんの勢いに圧倒されて、話題が立ち消えた。
期末テストが終わった日曜日。
野木さんはまた、朝秀先生のお家へとうかがった。
焼成後、じっくり3日かけて温度を落とした登り窯から、出来上がった作品を窯出しするそうだ。
今回は明田先生が行くとのことだったので、私は理由を付けて遠慮してみた。
野木さんは、まんまと明田先生と2人きりで京都へプチ旅行となったわけだが……残念ながら、野木さんの望む進展はなかったらしい。
終業式が終わり、冬休みが始まった。
折しもクリスマスイブの日から、私と薫くんは、藤巻くんとともにお寺の別院へ通うことになった。
朝、玲子さんがわざわざ迎えに来てくれた。
「さっちゃんと一緒に出勤できるなんて、心強いわ~。」
車の中で、本当にうれしそうな玲子さんに、不思議な気持ちになった。
心強い?
……どういう意味だろう。
だって、玲子さん、もうずいぶん長くお勤めしてるのに……。
別院の職員ガレージに車を駐めると、玲子さんの表情が変わった。
緊張してるように見える。