小夜啼鳥が愛を詠う
頼之さんがうっすら笑った。
「……そうか。御院さんって、お前の友達のお父さんやろ?……つくづく、玲子さんは、うっとことご縁があるんやな。……もう、玲子さんも親戚みたいなもんやな。」

自分のお父さんを奪った女性に対する言葉とは思えないことを、さらっと言っちゃう頼之さん。

ほんと……かっこいい……。

「てか、あの2人って、何年つきあってたん?……さっさとくっついてくれたらよかったのにぃ。」

口をとがらせた光くんママを、頼之さんがやんわりとたしなめた。

「そんな単純なもんでも簡単なもんでもないやろ。お互いまっさらちゃうねんし、葛藤も、周囲への配慮もあるやろし。……とりあえず、お母さんには今夜言うとして……社長には明日でええか。」

「もう!頼之さん、いっつもお義父さんにはイケズなんやから。かわいそうやん。……ね。家に戻らはったら、ちゃんと『お父さん』っ呼んであげてーね?」

光くんママにそう言われて、頼之さんは神妙にうなずいた。

……頼之さん、たぶん……イケズな自覚なかったんじゃないかな。



「……成之、今夜、うちに来るけど。」

ボソッと、パパが言った。

「あ。そっか。クリスマスイブやもんね。……ふーん。そっかあ。」

そう言って、光くんママはこれ見よがしに媚び媚びの表情で、下から頼之さんを覗き込んだ。

「……さっちゃんママの……ご馳走……美味しいだろうなー。」
光くんママは、そんなおねだりを始めた。

「はいはーい!俺も!桜子と一緒にクリスマスがいい!」
薫くんも手を挙げて、ママに賛同した。

光くんは少し離れたところで苦笑いしていたけれど……血は繋がってないはずの頼之さんも同じ表情をしていた。

「お母さんかて、うちでケーキ買うて待っててくれてるやろ。待たせたらかわいそうやで。」

至極もっともなことを言った頼之さんに、パパが言った。

「じゃあ、料理もケーキも、真澄さんと一緒に持ってくれば?賑やかでいいんじゃない?……ハッキリ言って、玲子より、あの2人のほうがおっとりしてるぞ。周囲でお膳立てして勢いづけたほうがいいと思う。」

光くんママは、うれしそうにパパを見て
「ありがとう、マスター!光のこと、一生ただ働きでこき使ってくれていいですよ。」
と、とんでもないことまで言った。

パパの片頬がひきつった。
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