小夜啼鳥が愛を詠う
成之さんは、たぶん涙をこぼさないように、静かに目を閉じた。
そして、そのままお礼を言った。

「……ありがとう。」

満足そうに、パパが何度もうなずいた。

「じゃ、まとまったところで、乾杯するぞ。……はい、じゃあ、小門と真澄さんが今度こそ幸せになれますように。メリークリスマス!乾杯!」




その夜、パパは深酔いしてしまった。

小門一家が帰ってしまった後、パパはソファで寝てしまったけれど……寝ながら泣いていたように見えた。

……うれしいけど、淋しいのよ……と、ママが教えてくれた。

そうしてママは、浮き浮きと玲子さんに電話しようとした。

「今夜は遠慮したら?あちらも、待ちわびた夜だと思うよ?」

一応そう窘めたら、ママはキョトンとして、それから私のひたいを、人差し指でちょんとつついた。

「なまいき!……でも、子供だ子供だと思ってたら……さっちゃんも、そんな気遣いできる歳なのね。」

ママはそう言ってから、首を傾げた。

「でも、光くんはやめたの?」

ギクッ!
さすが母親……しっかりバレてる!

「……そう見えた?」

恐る恐るそう尋ねると、ママは私の顔色をうかがうように見た。

「んー。今までとは違うかな、って。ほら、今までは……さっちゃん、光くんしか見えてなかったから。」

そう。
そうかもしれない。

ちょっとためらいもあったけれど……私は周囲の幸せに勢いをもらって、今の自分の気持ちを正直に言った。

「光くんのこと、よくわからないの。……ずっとそういうものだとあきらめてたの。でも、気づいたの。……光くんは、ずっと私が傷つかないように、そして思いつめないように、気を遣ってくれてたんんだ、って。」

「……うん。」
ママは苦笑まじりにうなずいた。

そう言えば、前に玲子さんにも指摘されたっけ?
ママもちゃんとわかってたんだ……。

「たぶん、適齢期ぐらいまで、それでも光くんが好きって言い続けたら、あっさりお嫁さんにしてもらえると思う。でも、ちょっと違うかな、って。」

そこまで言ってから、私は一息ついて、思い切って言った。

「私、薫くんが好きみたい。」

「えっ!?」

声を挙げたのは、ママじゃなかった。

ソファで寝てたはずのパパが、跳ね起きて、素っ頓狂な声を出したようだ。

「……あらあらあら。それは……うん……いいと思うわ……」

そう言ながらも、ママは堪えきれず、笑った!
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