小夜啼鳥が愛を詠う
「ひどっ!なんで、笑うの!?」

せっかく打ち明けたのに、笑われてしまった……。

「あはは……ごめんごめん。違うの。いいわぁ。さっちゃん。予想の斜め上、いったわ。……そう……薫くん、かあ。いいと思うよ。うん。……気長に、ね。」

ママはそう言いながらも、何度も、笑った!

「もう!……てか、パパ!?何で泣くの!?」

パパは、声もなく、だーだー涙を流していた。

何なの?この状況。
藤巻父子と玲子さん、小門一家、菊地先輩と椿さん……みんな幸せそうなのに、うちだけ、何でこうなの?

もう~~~~~~~!



翌朝、何となく山が白かった。
夜中に、少し雪が降ったのかな。

うっすら白い山を眺めていると、玄関チャイムが鳴った。

インターホンをとったママの声が妙に弾んだ。

「あら!あらあらあら!……夕べはお疲れさま。おかげで、私たちも楽しい夜だったわ。……ん?どうしたの?あら、上がってらっしゃいな。……あら、そう。残念。いいわ。ちょっと待ってね。……さっちゃーん!」

ドキンとした!

光くん?
薫くん?

どっち!?

慌てて駆け寄ってモニターを覗いた。

薫くんだ!

ママから受話器をもらって、すぐに出た。

「も、しもし?」
緊張し過ぎて、声がうわずった上に、変なところでつっかえちゃった。

『桜子?あんなぁ、玲子、やっぱり昨日と同じ服着とったわ!』

薫くんはそう言って、ジタバタとその場で走り回った。

……こらこら。

わざわざ見に行って、しかも、それを報告に来てくれたんだ。

まったく……もう……

「薫くんの……エッチ~。」

呆れてそう言ったら、薫くんは、くしゃっと笑った。

……かわいい。

胸が、キュンとなった。

『ほな、それだけ!また明日な!じゃあっ!』

薫くんはそう言って、さっさと行ってしまった。

……本当にそれだけで来たんだ……。

「行っちゃった……。」

受話器を壁に掛けると、ママが楽しそうに笑って言った。

「ほんと、イイ子ね。薫くん。理由はなんでもよかったんじゃない?さっちゃんと逢いたかったんでしょ。かわいい。」

「……だったら、上がってくればいいのに。」

ちょっと拗ねてそう愚痴ると、ママが教えてくれた。

「藤巻くんと待ち合わせしてるって急いでたわよ。」

ふーん。
学校が休みになっても、ボランティアがない日でも、藤巻くんとは一緒なのね。

「藤巻くん、いいなぁ。」

そうこぼしたら、ママに思いっきり笑われた。
< 162 / 613 >

この作品をシェア

pagetop