小夜啼鳥が愛を詠う
薫くんは、照れまくる私に目を細め、光くんには挑戦的に笑って見せた。
「俺の~。いいやろ~。」

……薫くんってば、光くんに見せつけてご機嫌さんらしい。

でも光くんは、肩を震わせて笑いを堪えて言った。

「はいはい。そんなに当てつけがましいことしなくてもいいから。……それとも、消毒のつもり?だったら、ちゃんと唇にも」
「光くんっ!!!」

私は慌てて、光くんの言葉を止めた。

内緒って言ったのに!
何で、自分で暴露しちゃうかなあ?

珍しく本気で怒ってる私を指さして、光くんは大笑い。

薫くんは、そんな私たちを見て、肩をすくめた。

「知ってる。光が桜子とキスしとー写真も残っとーからな。」

写真……。

あ……そっか。
薫くん、小さい頃のことを言ってるんだ。

何となくホッとした。
……まあ、薫くんなりの気遣いかもしれないけど。

「そうそう。薫が真似するから、僕はさっちゃんとキスできなくなったんだよ。」
光くんはそう言って、立ち上がった。

「先に行くよ。ロシニョールが鳴くまでに帰っておいで。」

……邪魔……しないの?
何となく、ホッとしたような……さらに緊張するような……。

「え?いいんけ?」
薫くんが、ニヤッと笑った。

「まあ、ちょっとぐらいは、ね。……僕、さっちゃんに恥かかせたくないし、薫に恨まれたくないもん。」
光くんはそう言って、きびすを返して、ひらひらと手を振った。

「や!でも光くん!光くんのことも心配なんだけど。……また、海、はまらない?ちゃんと、まっすぐ別荘に帰る?」

慌てて光くんの背中にそう問いかけた。

光くんは、半分だけ振り返って、笑顔で言った。
「帰るよ。あーちゃん、別荘にいるもん。」
……あ、そっか。

それ以上、何も言えなくなってしまった。
光くんも振り返らなかったし、……それより、薫くんが……。

……どうしよう。
気がつくと、私、薫くんに背後から抱きしめられてる……。
やばい。
ドキドキする。

「寒ぅない?」
「……うん。」

むしろ、緊張で汗が吹き出してきそう。

「ドキドキする……。やばいぐらい、緊張してきた。」
薫くんがそう言って、ぎゅーっと私を抱く手に力を込めた。

……なんだ。
私だけじゃないんだ。

そう思ったら、何となくドキドキがおさまってきた。
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