小夜啼鳥が愛を詠う
「んー。そんな高くない。かわいい娘役になりそう、って、しーちゃん、言ってたし。」

そう伝えると、椿さんはホッとしたらしい。

『あ。そう。それなら、なんぼでも応援するー。受験スクール紹介したげるって言っといて』

椿さんの電話を切ってから、思わず指を折って数えた。

みゆちゃんが受験資格を得るのは、三年後。

もし中卒時の一回めの受験で合格できたとすれば、椿さんより四期下ってこと……か。
けっこう、楽しみかも。



2日後の朝、光くんと一緒に、真新しい制服姿の薫くんが来た!

「まあ!かっこいい!学ラン着ると、ぐっと男っぽくなったわね。……写真撮ってあげようか?」

はしゃぐママに、照れくさそうに薫くんは頭を下げていた。

「ありがとうございます。」

……撮るんだ……。

「ほら、さっちゃんも。並んで。……かーわいい。似合ってる。じゃあ撮るわよ。はい、鳩が出ます。よ。」

「……なんや?それ。」
聞き覚えがない薫くんがいぶかしげな表情をしたようだ。

「薫くん。笑顔笑顔。はい、撮り直し。」

ママは何度も鳩が出る出ると繰り返して撮影してくれた。

3人の写真も、兄弟2人の写真も、……薫くんと私のツーショットも。

……薫くんが5つ歳下でも、長い目で見て、応援してくれてる……普通なら反対されてもおかしくないのに、うちも、小門家も……まあ、普通じゃないから?
ありがたいな。

「入学式、何時から?10時?」
「ああ。9時集合。」

え?

「まだ一時間もあるよ?……わざわざ、私たちに合わせてくれたの?」

恐る恐るそう聞くと、薫くんは胸を張った。

「おう!この日を待っとったからな。光ばっかし桜子を迎えに行ってずるいって。……これからは、毎日、俺も来るから。」

「……俺が、じゃなくて、俺も……ってところが、かわいいね、薫。でも、ざーんねん。サッカー部は朝練あると思うよ?毎日は無理無理。」
光くんが意地悪い顔で、からかうようにそう言った。

でも薫くんは、ケロッと言ってのけた。
「何で?一番早いモンに合わせたらいいやん。なあ?」

なあ、って……。

それって、薫くんの朝練タイムに合わせて、私達も登校しなきゃいけないってこと?

……もしかして、下校時間も、薫くんの部活が終わる時間まで待つのだろうか。
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