小夜啼鳥が愛を詠う
落ち込みそうだけど、光くんも薫くんも、つないだ手にちょっと力を込めて、たぶん励ましてくれた。

「おはよう。みゆちゃん。制服、とても似合ってる。かわいい。」
私は笑顔を貼り付けてそう言った。

みゆちゃんはツンと顎を出した。
「当たり前よ。……てか、このへんの公立高校の女子の制服は、ダサ~い。」

……その通り……だけどね。

苦笑してうなずくと、みゆちゃんは複雑そうな表情になった。

あれ?
素直になれないだけで、私に喧嘩を売ってるわけでも、悪意で中傷してるわけでもないのかな。

私は敢えて笑顔をキープして言った。
「私もセーラー服好きだったなぁ。やっぱり制服はかわいいほうが毎日うれしいよね。」

するとみゆちゃんは、こっくりうなずいて、それから私をしっかり見据えて言った。
「私はそんなダサい制服着ないから。音楽学校、受験することにしたから。」

……まるで宣戦布告のように、高らかにみゆちゃんは宣言した。

「え!素敵!うわぁ……楽しみ!はいはーい!私、みゆちゃんのファン一号!」

思わず右手を上げたら、漏れなく薫くんの右手がついてきた。

みゆちゃんの目がキラッと輝いた。

「いや、俺は、どうでも……」
「はーい!僕らも応援するよー!ね!薫!」
どうでもいい、と吐き捨てようとした薫くんを、光くんがそう誘導した。

せっかくみゆちゃんがやる気になってるのに、水を差さないで!
私も薫くんに、瞳でそう懇願した。

私達の想いが通じたのか、通じてないのか、薫くんはぶっきらぼうに言った。
「まあ、男目当てにサッカー部のマネージャーするよりはよっぽど有意義なんちゃう?でも、今からで、間に合うんけ?みゆ、バレエとか経験あるん?」

みゆちゃんは、花のようにほほえんだ。

……やっぱりめちゃめちゃかわいいわ……この子。

「バレエは、ない。でも、みゆ、ずっとバトントワリングしてたから。大丈夫だと思う。声楽は、死ぬ気でやる。」

バトン!

「えー!素敵!みゆちゃん、バトンできるんだ!フランスでも続けてたの?日本は世界でもレベルが高いから、向こうで活躍できたでしょ?」

私が食い付いたことが意外だったらしく、みゆちゃんは明らかにたじろいで、それから頬を染めた。

か、かわいいっ!
きゅんきゅんするー!
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