小夜啼鳥が愛を詠う
みゆちゃんは、薫くんにベーッ!と、かわいく舌を出して悪態をつくと、気を取り直して、私を手招きした。

「桜子さん、一緒に撮る。」

……え……。
いいの?

恐る恐る近づくと、みゆちゃんは、なんと、私の腕にするりと自分の腕を絡めて、ぴとっとお顔を寄せてきた。

ひやぁぁぁっ!

写真撮影上の演出とはいえ、なんか、もう、かわいくてかわいくて……やばい!

「……さっちゃん……にやけてる……。」

光くんに指摘されて、私は慌てた。

「や!あの!だって、みゆちゃん、かわいくって!」

ジタバタしながらそう訴えると、みゆちゃんは満足そうに笑顔を見せた。

「桜子さんも。かわいい。」

そう言って、みゆちゃんは薫くんに、もう一度、ベーッ!としてから、私にしがみついてきた。

うわああぁぁっ!

「みゆ!こら!離れろ!ふざけんな!桜子は俺のんや!」
薫くんが喚く。

「知らなーい。ふざけてないもーん。ねー。お姉さま。」

みゆちゃんが、私に甘えるように同意を促す。

「え……うん。わ!薫くん!こわい!」

反対側から、薫くんも私に腕を伸ばして捉えた。

「ふふ。さっちゃん、モテモテだね。撮っちゃおうっと。」
光くんが楽しそうに連写した。



桜は既に散ってしまったけれど、春うららかなこの佳き日、薫くんは中学生になった。




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第11章1節「薫くん、中学生になる」でした。

2節は、1年後からのスタートです。
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