小夜啼鳥が愛を詠う
「じゃあ、これで。失礼します。さっちゃん、また明日ね。薫。行くよ。……薫?」
光くんは慇懃無礼にお辞儀をして、それから薫くんを促した。
でも薫くんは、まだ玲子さんと話したいらしく、後ろ髪を引かれまくっている。
「御堂の線香も、おばちゃんなん?」
「薫!」
光くんに手を引かれても、薫くんはまだ振り返り振り返り、そう尋ねた。
玲子さんの頬がふっと、ゆるんだ。
「ええ。そうよ。……バイバイ、薫くん?気をつけてね。」
玲子さんが薫くんに手を振った。
薫くんもまた手を振って、それから私に叫んだ。
「桜子、またなー!」
「……はは。バイバイ。」
ここに来たときのへっぴり腰とは別人のように、光くんは薫くんの手を引っ張ってずんずんと山道を歩き消えて行った。
薫くんは何度も笑顔で振り返って手を振っていた。
「……人なつっこい子ね。……驚いたわ。笑顔がね……似てたの。」
玲子さんは、帰り支度をしながら、そうつぶやいた。
「……成之さんに?」
恐る恐るそう聞いてみた。
光くんは違うけど、薫くんは成之さんの実の孫だ。
似てても不思議じゃない。
でも玲子さんは、首を傾げるように、ゆっくりと否定した。
「……死んだ伊織に。」
ドキッとした。
さっき玲子さんが言ってた、25年以上前に亡くなったという?
……あ。
そうか、その子も成之さんの子供だったわけだから……伊織さんは薫くんにとって実の叔父。
似てても全然おかしくない。
「玲子さん……。」
言葉が出ない。
無難な言葉じゃなくて、ちゃんと話を聞きたいのに……うまく聞けそうにない。
「さ。帰ろうか。夕食作らなきゃ。めんどくさいけど。」
玲子さんはそう言って、洋館の鍵を閉めた。
くすんだ金色の鍵は、まるでお伽話に出てくるアイテムのうに美しかった。
「鍵まで綺麗なのね。素敵。ね、今度、中も見せてほしい。部外者はダメ?」
「わかった。御院さんに聞いてみる。たぶん大丈夫よ。」
「ごいんさん?」
変な名前。
きょとんとしてると、玲子さんがちょっと笑った。
「名字じゃないわよ。んー、お寺の和尚さんと同じ意味かな?この施設を管理してるお寺の代表。」
え?
それって、もしかして……
「藤やんのお父さん?」
薫くんのお友達?
「……わかんないけど……御院さんの名字は藤巻さんだから、そうかもね。」
藤巻さんか。
なるほど、藤やん、かも。
今度、薫くんに聞いてみよーっと。
光くんは慇懃無礼にお辞儀をして、それから薫くんを促した。
でも薫くんは、まだ玲子さんと話したいらしく、後ろ髪を引かれまくっている。
「御堂の線香も、おばちゃんなん?」
「薫!」
光くんに手を引かれても、薫くんはまだ振り返り振り返り、そう尋ねた。
玲子さんの頬がふっと、ゆるんだ。
「ええ。そうよ。……バイバイ、薫くん?気をつけてね。」
玲子さんが薫くんに手を振った。
薫くんもまた手を振って、それから私に叫んだ。
「桜子、またなー!」
「……はは。バイバイ。」
ここに来たときのへっぴり腰とは別人のように、光くんは薫くんの手を引っ張ってずんずんと山道を歩き消えて行った。
薫くんは何度も笑顔で振り返って手を振っていた。
「……人なつっこい子ね。……驚いたわ。笑顔がね……似てたの。」
玲子さんは、帰り支度をしながら、そうつぶやいた。
「……成之さんに?」
恐る恐るそう聞いてみた。
光くんは違うけど、薫くんは成之さんの実の孫だ。
似てても不思議じゃない。
でも玲子さんは、首を傾げるように、ゆっくりと否定した。
「……死んだ伊織に。」
ドキッとした。
さっき玲子さんが言ってた、25年以上前に亡くなったという?
……あ。
そうか、その子も成之さんの子供だったわけだから……伊織さんは薫くんにとって実の叔父。
似てても全然おかしくない。
「玲子さん……。」
言葉が出ない。
無難な言葉じゃなくて、ちゃんと話を聞きたいのに……うまく聞けそうにない。
「さ。帰ろうか。夕食作らなきゃ。めんどくさいけど。」
玲子さんはそう言って、洋館の鍵を閉めた。
くすんだ金色の鍵は、まるでお伽話に出てくるアイテムのうに美しかった。
「鍵まで綺麗なのね。素敵。ね、今度、中も見せてほしい。部外者はダメ?」
「わかった。御院さんに聞いてみる。たぶん大丈夫よ。」
「ごいんさん?」
変な名前。
きょとんとしてると、玲子さんがちょっと笑った。
「名字じゃないわよ。んー、お寺の和尚さんと同じ意味かな?この施設を管理してるお寺の代表。」
え?
それって、もしかして……
「藤やんのお父さん?」
薫くんのお友達?
「……わかんないけど……御院さんの名字は藤巻さんだから、そうかもね。」
藤巻さんか。
なるほど、藤やん、かも。
今度、薫くんに聞いてみよーっと。