小夜啼鳥が愛を詠う
「えーと、古城は?親戚か何か?」

明田先生は私にそう尋ねたけど、ハッキリと温度差を感じた。

……拗ねるわけじゃないけど、光くんと一緒にいると、いつもこうだ。
光くんがあまりにも美しくて、かわいくて、愛されるから、私はどうでもいい存在になっちゃうのよね。

「さっちゃんは、家族のようなものです」
光くんは笑顔でそう言った。

……誇張じゃなく、その通りなんだろうな……今は。

でも、本当の家族、特にママとの格差ったら、笑っちゃうぐらい大きいけど。

明田先生は、光くんの言葉を「友達」ではなく「恋人」でもない、光くんにとって「姉妹」とでも思ったのかもしれない。

「そうか。……心配してそばについててくれるヒトがいて、よかったな。」
穏やかにそう言って、光くんに微笑んだ。

でも光くんは不満そうに言った。
「そばにいませんよ。ご存知の通り、別のクラスです。とりあえず一年は我慢して登校はしますけど、来年もさっちゃんと別のクラスになったら、登校拒否するつもりです。」

「光くん!?」

何を言い出すの!?

びっくりして、思わず光くんの腕に触れた。
……かたい。
学ランの上からでも、たくましい筋肉がよくわかった。

やだ。
ドキドキしちゃう。
意識してしまう。

明田先生は、光くんの宣言に怒ることも、窘めることもしなかった。

「そうか。……まあ、そう決めつけず、気楽にな。そのうち、気の合う友達ができるかもしれない。……もちろん、嫌なら無理して登校しなくてもいいし、保健室でも図書室でも、居づらくないところで過ごせばいい。来年は、古城と同じクラスになれるよう、手を回すことにしよう。」

え!
いいの!?

明田先生、甘ーい!

光くんはニコッと笑ってうなずいた。

……何だか、不思議なモノを見てる気分。

てか、光くん……もしかして、今のって、甘えて言ったの?
先生が怒らないってわかっててのワガママだったのかな?

初対面にしては、打ち解け過ぎじゃない?

わからない。
私にはこの流れがまったくわからない。

けど、野木さんが言ってたことを思い出した。

明田先生の美しさは凡人にはわからないけど、光くんにはわかるって。

……あれって、こういうこと?
でも、何で!?

本気でわかんないんだけどー!!!
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