小夜啼鳥が愛を詠う
なるほどなあ。

確かに、おじいさまと義人さんの不和は希和子さんに、相当なストレスを与えてるようだ。


空気を読んでるんだか読んでないんだか……薫くんが、おじいさまに変なことを頼みだした。

「おじいちゃんおじいちゃん。スポンサーて、椿氏だけ?もう1人、おるんやけど。みゆのことも、応援したってくれませんか?」

「みゆ?……薫くんの友達かね?」

「友達……というよりは、俺にとっては、世話になった先輩の妹で、コーチの娘さんです。……桜子を姉のように慕っとる子ぉですわ。」

「……佐々木和也先輩の娘さん。弓弦羽(ゆづるは)みゆちゃん。ね。」

困ったような苦笑を浮かべて、由未さんが薫くんにそう言った。

「うん。甘ったれでワガママなみゆにしては根性入れてがんばってるみたいやから。由未ちゃん、観た?」

薫くんにそう聞かれて、由未さんはうなずいた。

……てゆーか……私から見て薫くんの向こうの天花寺さんの笑顔が……能面みたいなんですけど……。

奥さんの由未さんが昔好きだったヒトが佐々木コーチって、正しく利解されてる気がする。

……いや。

間違いなく、おじいさまも……知ってるような……。

何だか、狐と狸の化かし合いみたい。

この状況でイニシアティヴをとれる薫くんって……やっぱりただ者じゃないのかもしれない。

「……観た。綺麗な子ね。踊れるし。……くだらないイジメにも動じないらしいわよ。強い子みたい。」

由未さんの言葉も、表情も……他人事というには、優し過ぎた。

……初恋の相手の娘って……かわいいものなのかな。

一概にそうは言えないと思うんだけど……由未さんが優しいヒトなことは伝わってきた。

もちろん未練は感じないけど……。

むしろ、佐々木コーチのほうが未練ありありって感じだったっけなあ。

「由未ちゃん、詳しい。そっか。応援してくれてたんや。よかったぁ。ほな、次のお茶飲み会、誘うわ。コーチも喜ぶ思う。」

薫くんはさらっとそう言った。

何も知らないふりしてるけど……確信犯だよね?

知ってるくせに……。

由未さんは、困ったように首を傾げた。

「……いやぁ……それは……。」
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