小夜啼鳥が愛を詠う
「イザヤトンダ。イザヤオチタ。」
いざやくんは、目をぱちくりさせてそう話した。
「……いざや~~~。」
泣きそうな顔でまいらちゃんが、薫くんに向かって手を伸ばす。
「おう。気ぃつけぇや。こけたら、低い鼻がますます低くなるで。」
薫くんは、そんなことを言いながら、いざやくんをまいらちゃんに返した。
「薫くん!」
年頃の女の子にデリカシーのないことを……。
でも、まいらちゃんは、にへら~っと笑った。
「孝義くんにも似たようなこと、よく言われる~。」
……坂巻さんも……ひどいなあ。
まあでも、まいらちゃん自身が傷ついてないなら、いっか。
「……お嬢さま。お着物のたもとが。……鳥は……膝の上で……。」
カメラマンさんが、まいらちゃんのポーズと、いざやくんの位置を指示する。
「はい。よろしいですか。笑ってください。えーと……。鳥……。」
「いえ。鳩が出ますよ、です……。」
遠慮がちに由未さんがつぶやく。
すると、いざやくんが、カメラマンさんと由未さんの口跡を真似た。
「ハイ、ハトガデマス、ヨ。」
ぶはっ!と、おじいさまが豪快に笑う。
おばあさまが、声を上げて笑う。
まいらちゃんが、いざやくんに笑いかけてキスする。
由未さんが吹き出す。
天花寺さんが、由未さんの肩を抱き覗き込むように屈んで微笑む。
義人さんは、のけぞって笑う。
希和子さんが口元に手を当てて笑いをこらえる。
そして、薫くんは……どさくさ紛れに私を抱きしめた。
もちろん、撮り直した普通のおすまし写真も、作り笑い写真もあるけれど……自然な笑顔がいっぱいのこの写真が、私たちが始めて仲間入りした記念の家族写真となった。
(了)
******************************************
第11章3節「野木さん、結婚する」でした。
桜子ちゃんのお話はここまでです。
お付き合いありがとうございました。
残る蛇足は、あと1つ。
視点を変えて、光くんのお話です。
いざやくんは、目をぱちくりさせてそう話した。
「……いざや~~~。」
泣きそうな顔でまいらちゃんが、薫くんに向かって手を伸ばす。
「おう。気ぃつけぇや。こけたら、低い鼻がますます低くなるで。」
薫くんは、そんなことを言いながら、いざやくんをまいらちゃんに返した。
「薫くん!」
年頃の女の子にデリカシーのないことを……。
でも、まいらちゃんは、にへら~っと笑った。
「孝義くんにも似たようなこと、よく言われる~。」
……坂巻さんも……ひどいなあ。
まあでも、まいらちゃん自身が傷ついてないなら、いっか。
「……お嬢さま。お着物のたもとが。……鳥は……膝の上で……。」
カメラマンさんが、まいらちゃんのポーズと、いざやくんの位置を指示する。
「はい。よろしいですか。笑ってください。えーと……。鳥……。」
「いえ。鳩が出ますよ、です……。」
遠慮がちに由未さんがつぶやく。
すると、いざやくんが、カメラマンさんと由未さんの口跡を真似た。
「ハイ、ハトガデマス、ヨ。」
ぶはっ!と、おじいさまが豪快に笑う。
おばあさまが、声を上げて笑う。
まいらちゃんが、いざやくんに笑いかけてキスする。
由未さんが吹き出す。
天花寺さんが、由未さんの肩を抱き覗き込むように屈んで微笑む。
義人さんは、のけぞって笑う。
希和子さんが口元に手を当てて笑いをこらえる。
そして、薫くんは……どさくさ紛れに私を抱きしめた。
もちろん、撮り直した普通のおすまし写真も、作り笑い写真もあるけれど……自然な笑顔がいっぱいのこの写真が、私たちが始めて仲間入りした記念の家族写真となった。
(了)
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第11章3節「野木さん、結婚する」でした。
桜子ちゃんのお話はここまでです。
お付き合いありがとうございました。
残る蛇足は、あと1つ。
視点を変えて、光くんのお話です。