【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
――ドサドサドサッ!と抱えていた荷物を玄関に下ろした。

「これで全部よね?」

「はい。ありがとうございます」

雪ちゃんが持っていてくれた、ボストンバッグを受け取る。

「それにしても、多くなっちゃったわね」

「そうですね……」

ボストンバッグ2個、リュック1個、ハンドバッグ6個(会社用含む)。ちょっと荷物を取りに行っただけなのに、予想外の大荷物になってしまった。何がかさ張るって、メイク道具や服類。

「メイク道具は貸してあげるって言ったのに」

「そうは行きませんよ。私と雪ちゃんじゃ、使っているファンデーションの色が違ったじゃないですか」

雪ちゃんの方が少し濃い色合いのファンデーションを使っていて、私には合わなかった。

「これはキッチンに運べば良い?」

パンパンに膨らんでいるリュックを指差す。メイク道具・服と同じ位……いや、それ以上にかさ張った物。

「あ、はい。お願いします」

私は、それとは別の荷物達を部屋へと運ぶ。

「よっ……と!」

雪ちゃんがリュックを持ち上げると、ガチャン!と音がして、「わっ!何か割れた!?」と慌てている。

「いえ、その中に割れ物は入っていません。多分、ケーキの型がガチャガチャ言ってるだけだと思います」

「良かった……」

雪ちゃんがホッと胸を撫で下ろす。

これは、私の大切な調理器具。雪ちゃんの家には、最新の調理器具が何個か揃っていたけど、やっぱりいつも自分が使っている馴染みのある道具が恋しくなって持って来た。

「これだって、新しく買えばって言ったのに……」

雪ちゃんが、唇を尖らせて言う。

「なんでもかんでも買っちゃえば良いって、雪ちゃんの悪い癖ですよ。それに、長年使っていて愛着があるんです。その道具じゃなきゃ駄目なんですよ」

「ふ~ん。そんなもん?」

「はい。そんなもんです」

イマイチ理解が出来ないのか、まだブツブツ何かを言いながら、それでもキッチンへ運んでくれる。
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