【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「……はぁっ!」

ロビーに辿り着いた私は、流れる汗を拭いながら作業服の男を探した。

「……はぁ……はぁ……はぁ……」

近くにいる人が私をジロジロと見ているけど、今の私にはそんな事はどうでも良かった。

ロビーから上を見上げると、やっぱり海外事業部が見える。気にした事が無かったから気が付かなかった。

雪ちゃんがまだみんなに詰め寄られている光景が目に入る。しかし、今はそれどころじゃない。額の汗を拭いながら、辺りを見回す。

「……いた……」

私の予想は、ビンゴだった。

あの時すれ違った作業服の男が、今まさに玄関から外へ出ようとしている。逃してなるものか!と、私はその場で力一杯叫んだ。

「待ちなさいよ、笹木っ!!!」

ロビーに私の声がこだました。その声に反応して、作業服の男の足がピタッと止まる。

私の叫び声に周りの足も止まり、ロビーがシーンと静まり返った。

「……あなた、笹木でしょう!?なんでこんな事するのよ!?」

騒動を聞き付け、『どうした?なんだ?』と、野次馬達がわらわらと周りに集まって来る。

黙ったまま何も答えないでいる男に私のイライラが頂点に達し、

「黙ってないで何とか言いなさいよ!このサイテー野郎!!」

ともう一度叫んだ。
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