【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
後悔の念で泣きそうになるのをこらえ笹木を見ると、この状況が心底楽しい、と言う様な顔で笑っていた。

(なんでコイツは笑っていられるのっ!?)

コイツの…笹木のせいでこんな事になっているのに!?

私はいよいよ我慢が出来なくなり、握り拳に更に力を入れ、笹木に詰め寄ろうとしたその瞬間――、

「あー、うるさいうるさい!アタシがオネエでなんか悪い!?」

と言う雪ちゃんの怒鳴り声がロビーに響いた。

シーン……。と今までヒソヒソ話をしていた人達が皆、静まり返る。

すると、暫く顔を見合わせていた野次馬達が、こう言った。

「べ、別に悪くない、よね……?」

と。

その言葉を皮切りに、

「うん……ちょっとビックリしたけど、イマドキ珍しくもないし、ねぇ……?」

「まあ、個人の自由だし、問題なくね?」

「そーだな」

「個性は大事だよ」

「うんうん」

と、私達が全く予想していなかった言葉が飛び交って、今度は私達が顔を見合わせる。

誰一人として、雪ちゃんを『気持ち悪い』などと言う人はいなかった。

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