【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「とにかく!注意しなさいよ!?」

「分かったよ」

「本当に!?」

「ホント、ホント」

「言い寄って来るヤツがいたら、すぐに報告しなさいよ!?」

「分かったって、しつこいなー。全部断ってるし、もうそんな人いないよ」

私のこの言葉に、ピタッと雪ちゃんの足が止まる。

「雪ちゃん?」

「『全部断ってる』………?」

雪ちゃんが反芻(はんすう)したのを聞いて、私はハッ!と口を押さえた。

ヤ、ヤベー……。今さっき、言わないって思い直したのに。自分の中で気にしていたから出ちゃったんだろうな。

「……江奈ちゃん?それはどう言う意味かしら?」

笑っているけど笑ってない。

雪ちゃんの後ろで、ゴゴゴゴッ!と地響きが鳴っているかの様だ。

「いや、あの……」

丁度その時、社長兼秘書課専用のエレベーターが開き、私はラッキー!とそれに飛び乗った。

「じ、じゃあね、雪ちゃん!」

『閉』のボタンを連打し、ヒラヒラと手を振る。

扉よ、早く閉まってくれ……。

「江奈!帰ったら覚えてなさいよ!?」

扉が閉まる直前に、雪ちゃんが叫んだ。


今日の夜は、こりゃあ大変だな……。

< 184 / 194 >

この作品をシェア

pagetop