【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「あ、でも未遂だから大した事はなかったのよ。今はあの通りピンピンしているし。でも、その理由がね……」
津田部長が、フォークでナポリタンをクルクルと巻いている。しかし食べる素振りはなく、ただ巻いているだけ。
「R商事の営業部部長、三上尚己。あ、ハナの本名ね。結構有名だったのよ。仕事が出来るエリートだ、って……。ライバル会社なのに、実際に会った事はなかったわ。アタシはその時、まだ平社員だったし。顔位は知っていたけどね。だから2丁目のバーで遭遇した時は本当に驚いた。あの時のアイツの顔ったら」
その時の事を思い出したのか、ふふふと懐かしむ様に笑みが零れる。
「向こうもアタシの事を知っていたみたいでね。お互いに秘密も知っちゃったし、そこから仲良くなるのに時間はかからなかった。男の趣味はまるで正反対なんだけど、何故か話が合ってね。凄く気が楽だった。楽しかったわぁ……」
今まで微笑んでいた津田部長の顔から、突然笑みが消えた。
「だから、ハナが自殺未遂をしたって聞いた時は信じられなかった。そんな素振り、一切見せなかったから」
眉間にシワを寄せ、津田部長は必死に何かを耐えている。
「何故、自殺未遂を……?」
今まで黙って聞いていた私も、たまらず問い掛けた。
「……ハナの事を快く思っていなかった社内の誰かがリークしたのよ。『営業部部長の三上尚己はゲイだ。毎晩男漁りの為にゲイバーに通い詰めている』ってね。ご丁寧に、証拠の写真まで一緒に」
「……酷い……」
私は愕然とした。そんな卑劣な事をする人がいるなんて、信じられない。
「ホントよね。でも、それ以上に酷かったのは今までハナを慕っていた上司・部下達よ。全員がハナの敵に回ったの。面白半分でからかう奴等まで……」
津田部長が拳をギュッと握る。
「……そんな毎日に耐え切れなくなったのね。ある日、睡眠薬を大量に飲んで……」
「津田部長!」
私は、津田部長の拳を掴んだ。
「え?……あ……」
無意識だったのだろう。津田部長は血がにじむ位拳を強く握り締めていた。
津田部長が、フォークでナポリタンをクルクルと巻いている。しかし食べる素振りはなく、ただ巻いているだけ。
「R商事の営業部部長、三上尚己。あ、ハナの本名ね。結構有名だったのよ。仕事が出来るエリートだ、って……。ライバル会社なのに、実際に会った事はなかったわ。アタシはその時、まだ平社員だったし。顔位は知っていたけどね。だから2丁目のバーで遭遇した時は本当に驚いた。あの時のアイツの顔ったら」
その時の事を思い出したのか、ふふふと懐かしむ様に笑みが零れる。
「向こうもアタシの事を知っていたみたいでね。お互いに秘密も知っちゃったし、そこから仲良くなるのに時間はかからなかった。男の趣味はまるで正反対なんだけど、何故か話が合ってね。凄く気が楽だった。楽しかったわぁ……」
今まで微笑んでいた津田部長の顔から、突然笑みが消えた。
「だから、ハナが自殺未遂をしたって聞いた時は信じられなかった。そんな素振り、一切見せなかったから」
眉間にシワを寄せ、津田部長は必死に何かを耐えている。
「何故、自殺未遂を……?」
今まで黙って聞いていた私も、たまらず問い掛けた。
「……ハナの事を快く思っていなかった社内の誰かがリークしたのよ。『営業部部長の三上尚己はゲイだ。毎晩男漁りの為にゲイバーに通い詰めている』ってね。ご丁寧に、証拠の写真まで一緒に」
「……酷い……」
私は愕然とした。そんな卑劣な事をする人がいるなんて、信じられない。
「ホントよね。でも、それ以上に酷かったのは今までハナを慕っていた上司・部下達よ。全員がハナの敵に回ったの。面白半分でからかう奴等まで……」
津田部長が拳をギュッと握る。
「……そんな毎日に耐え切れなくなったのね。ある日、睡眠薬を大量に飲んで……」
「津田部長!」
私は、津田部長の拳を掴んだ。
「え?……あ……」
無意識だったのだろう。津田部長は血がにじむ位拳を強く握り締めていた。