【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
17時を10分程過ぎている。

笹木は営業課で、秘書課から離れた位置にオフィスがある。しかし、終業のベルと共に仕事が終われば、そろそろここに着く頃だった。ヤバイかもしれない。

「お先っ!」

カバンを掴み、挨拶もそこそこに私は勢いよく廊下に飛び出した。

「わっ!」

「キャッ!」

なんの確認もせずに飛び出した為に、廊下にいた誰かとぶつかって私はおもいっきり尻餅を付いた。

「……っ、た~……」

うっすら涙を浮かべながら、打ったお尻を擦る。めっちゃ痛い……。

「大丈夫!?」

聞き覚えのある声に、パッと顔を上げる。そこには、尻餅を付いた私に手を差し伸べてくれている津田部長が居た。

「え?なんで……?」

「急に飛び出したりしたら危ないでしょ!ホラッ!」

私は、差し伸べられた手を掴む。と、津田部長は軽々と引っ張り起こしてくれた。

「ありがとうございます。すみません」

私は、起こしてくれたお礼と、ぶつかったお詫びを言った。

「まったく……」

津田部長が呆れ顔で、スカートに付いたホコリをパンパンと叩き落としてくれる。

「ねえ、凄い音したんだけど、大丈夫??」

物音にドアからひょこっと顔を出した咲希子が、私の隣にいる津田部長を見て、あっ……と少し驚いた顔をする。

「……なぁんだ。ちゃんとお迎えがあるんじゃない」

状況を瞬時に察知した咲希子が、今度はニヤニヤし出した。

「え?あ、ちがっ……」

私は慌てて否定しようとしたけど、

「いーからいーから!その方が安全安心だし!津田部長。その子の事、宜しくお願いしますね。何があっても守って下さいよ!江奈、今度ゆっくり話聞かせてもらうから!じゃあ、ごきげんよう」

勘違いした咲希子が、おほほほと笑いながらオフィスへと戻って行った。
< 32 / 194 >

この作品をシェア

pagetop